今回ご紹介する本は、こちらです。
「もし明日、親が倒れても仕事を辞めずにすむ方法」川内潤
かなり切実なタイトルとなっていますが、読み終えると、親の介護は一人で抱え込まず、頼れるところはプロに頼ってしまえばいいんだと思えるようになり、気持ちが楽になります。
著者の川内潤さんは上智大学文学部社会福祉学科を卒業し、実家の介護サービス会社の職員として実際に介護の現場を数多く経験した後、現在「となりのかいご」というNPO法人の代表を務めている方です。実際の介護現場での経験をもとに、高齢の親を持つ方々がどのように介護に向き合うべきかについて分かりやすく説明してくれます。
この本を読むメリット
この本を読むと、親の介護のために仕事は絶対に辞めてはいけないということがよくわかります。なぜ辞めないほうがいいのか、その理由についてもデータに基づいて詳しく説明されています。
また親の介護が必要となりそうな時、どこに相談すればいいのか、介護が始まった場合自分は何をすればいいのか、その時どんな心理状態になるのか、その具体的なイメージトレーニングができます。
イメージトレーニングをすることで、実際に急に親の介護が必要な状況になっても、落ち着いて対応できるようになります。
そもそもいつ介護の相談をすればいいのか?そのタイミングがわからないという人向けに、不安解消チェックシートが用意されています。このチェックシートを使って今の親の状態をチェックすることで、相談するべきタイミングがわかるようになっています。
そして、親の介護は自分でやるのではなく、プロに任せるべきだという確信が持てます。
プロに任せる「任せ方」のプロセスが順を追って詳しく書かれています。
親がまだ元気で要介護認定を受けていなくても格安で受けられるサービスが色々あることもわかります。
後述しますが、私もこのサービスを利用することができました。
終章では悪徳老人ホームの見抜き方や、正しく要介護認定をもらう方法等も紹介されていて、リアルな介護現場を経験している著者のエピソードを交えながら、介護についての様々な疑問や不安を解消してくれる1冊となっています。
ご高齢の親をもつ方にぜひ読んでもらいたい1冊です。
この本の要点
私がこの本を読んで感銘を受け、重要だと思ったところを要点としてまとめてみました。
- 介護でいちばん大切なのは、仕事を辞めない、人に任せるというマインドセット
- 「自分で面倒をみるしかない」と絶対に思わないこと
- どんなに厳しい状況でも、選択肢は常にある
- 介護離職は誰のためにもならない
- 介護休業※や介護休暇※など、自分が利用できる会社の制度を把握して、積極的に利用しよう
- 早めに地域包括支援センターに連絡し、今後について具体的な計画を立てよう
- 介護のほとんどのことはプロの手を借りることで解決できる。色々な人を頼りながら、チームで介護をしていこう
- 介護の成功の鍵はケアマネージャー選びにあると言っても過言ではない
- あなたの仕事はチームをまとめるチームマネージメント
※介護休業 介護が必要な家族ひとりにつき、通算93日間・3回まで分割して会社を休むことができる法的な決まりごと。介護休業期間中も「介護休業給付」と言って給与の67%が雇用保険から支給される、とてもお得な制度です。
※介護休暇 介護休業とは別に、年間5日間(介護対象が2人以上の場合は最大10日間)まで有給である「介護休暇」を半日単位で取得できます。
私がこの本を読んだきっかけ
私には一緒に暮らしている高齢の母親がいます。でも今まで介護のことは全く考えてきませんでした。
というか全く想像もしていませんでした。
しかし親が歳を重ねるにつれて、様々な健康不安が出てきて、介護について考えないといけない状況になってきました。
母は膝の状態があまり良くなく、外出時には杖を使っています。
お酒が好きな母は、以前酒に酔って自分の部屋で転んで左の足首を骨折し、その約2年後に再び酔って転んで今度は右の足首を骨折しました。
その間私は有給を使って病院に連れて行ったり、母の身の回りの世話をするために早退させてもらったりして母が回復するまで、かなり会社にご迷惑をおかけしました。
この他にも最近では健康面で不安なところが多くなり、休みの日になると外科、内科、歯科と母の付き添いで行く機会が増えきました。
次第に自分の時間的、体力的、精神的、金銭的負担が増えていったのです。
私には離れて暮らす妹がいるのですが、子供もいてなかなか母の世話までできません。
平日は私が仕事で家にいないので、その間に母に何かあったらどうすればいいのだろうといった心配も出てきました。
「このままいったら、会社を辞めて母の世話をしていかないといけなくなる日が来るのかな」といった不安がよぎりました。
そんな時、この本に出会いました。読み進めると次の文章に目が留まりました。
「決して会社を辞めないでください。」
「自分の仕事と、親孝行としての介護を、天秤にかけないでください。
そもそもこの2つは天秤にかける必要はまったくなくて、両方ともとることができる」
この言葉に勇気もらい、読み終わった時には仕事を辞めずに何とかやっていけそうだと思えるようになりました。
読み終えてからの変化
読み終えてからすぐに、この本に書かれていた通りに行動を起こしました。
地元の「地域包括支援センター」に連絡をして、母の今後について相談に行ったのです。そこでは担当の方が親身に話を聞いてくれて介護認定を受けていない母でも受けられるサービスが色々とあることがわかりました。
しかも格安で!
その一つに、手すりの取り付けサービスがありました。5万円までの手すりの取り付け工事が1割負担の5000円でできるというのです。早速そのサービスに申し込み、家の玄関の内側と外側に手すりを付けてもらえることになりました。
他のサービスも申し込もうと思っています。
詳しいことはまた別の機会に書きたいと思いますが、この本を読んで、私の状況にも良い変化が起きています。
何より、母の状態を支援センターの方々に知ってもらい、情報共有できたことで、少し肩の荷が下りて楽になりました。
この本を読んでいなかったら、まだ一人でどうすればいいのか悩んでいたと思います。
この本には自分自身、とても助けられました。
私と同じように親の介護に不安を持つ人がいましたら、一度手に取って読んで欲しい1冊です。
本日もお読みいただきありがとうございました。